京都新聞 社説
麻生副総理発言 言葉足らずでは済まぬ
衆院選のさなか、麻生太郎副総理兼財務相から耳を疑うような発言が相次ぎ、波紋を呼んでいる。政権や自民党は打ち消しに躍起だが、選挙戦優位が伝えられる中、「1強」のおごりが顔をのぞかせているのではないか。
札幌市内の応援演説で麻生氏は少子高齢化で社会保障費が増加していることを取り上げ、「高齢者が悪いというようなイメージをつくっている人が多いが、子どもを産まないのが問題だ」と語った。
前日の長野県内の演説ではアベノミクスの成果を強調し「株価が戻り、円安に振れた。企業は大量の利益を出している。出していないのは、よほど運が悪いか、経営者に能力がないかだ」と述べた。
野党や自民内からも批判の声が上がり、麻生氏は釈明に追われた。いわく「私が言っているのは産みたくても産めない(ということだ)」、「デフレからインフレになったときに経営のあり方を変えないとしょうがない。経営者にしっかりと知ってもらうことが大事だという話をした」。
だが、言葉足らずで済まされる問題ではなかろう。政権ナンバー2である麻生氏の発言の根底には、政策の不備を若者や女性、中小企業に責任転嫁する姿勢が見えるからだ。その痛みを共有し、目を配る気持ちがあれば、決して出てこない発言である。
確かに、日本が抱える多くの問題は高齢化とともに、少子化が急激に進んでいることに根ざす。「働く世代=負担する側=支え手」が減るから社会保障制度が揺らぎ、経済成長が低迷している。
だが、男女がともに社会参加して成熟化が進むと、出産数が減るのは先進国共通の流れだ。欧州などは長時間労働の解消や育児休暇の充実などで、仕事を続けつつ、希望通りに子どもを産み育てられる環境を整えてきた。
そうした根本的な対応を日本の政治は怠り、少子化に拍車をかけた。その帰結が人口減少である。
安倍政権は成長戦略に女性活躍の推進を掲げ、先の国会に推進法案を出したが、唐突な解散で廃案になった。本気で取り組む気があるのか。単に女性を「成長の道具」とみてはいないか。そんな疑問がある中での麻生氏の発言だ。
アベノミクスによる円安は輸出企業を潤すが、調達コストの増加などで中小企業には倒産も増えている。政権が予定する法人税減税も含め、大企業優遇が過ぎないか。中小経営者の自助努力を超え、運や能力の問題ではあり得ない。
[京都新聞 2014年12月10日掲載]
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