2013年1月1日火曜日

正社員の夫がそれなりの給料をもらって、妻と子どもを養うという標準家庭モデルはすでに崩壊している。(沖縄タイムス)

沖縄タイムス
社説[新政権の社会保障]古い家族観で大丈夫か
2012年12月30日 09時54分

 2007年5月、安倍晋三首相の強い意向により設置された政府の教育再生会議は、母乳育児や子守歌の励行などを盛り込んだ「子育て提言案」をまとめた。 

 家庭の問題に「立ち入りすぎる」と批判され、すぐに撤回されたが、再登板した安倍政権の少子化対策にも、この伝統的家族観が色濃く表れている。

 自民党は、衆院選の政権公約や政策集で、年少扶養控除の復活、幼児教育の無償化を掲げた。

 年少扶養控除は15歳以下の子どもがいる世帯の税負担を軽くするもので、「社会の基本は自助にあり、家族の助け合いの役割が正しく評価されなければならない」と解説する。幼児教育の無償化については、その対象は3歳から。つまり2歳までの養育は家族の役割ととらえる。

 子育て施策の充実は目指すものの、政策の根っこにあるのは「子育ては親の役割」という考え方だ。「社会全体で育ちを支援する」とした民主党の政策からは軸足を移す。

 看板倒れの子ども手当など、結果的に子育てをめぐる環境に劇的な変化はなかったが、「認定こども園」の拡充を柱とする子育て支援関連法をつくるなど、民主党が示した社会的支援の方向は間違っていない。

 核家族化が進み、地域のつながりが薄れる中、子育てを親だけに任せていたら少子化に歯止めはかからない。社会の動向から乖離する家族重視の政策は、いずれほころびが表面化する。

   ■     ■

 田村憲久厚労相は就任の記者会見で、生活保護費の給付水準引き下げを表明した。自民党は衆院選公約で「10%引き下げ」を明記しており、段階的に減額していく方針だ。

 テレビなどで不正受給の報道が相次ぎ、生活保護バッシングが強まっている。

 不正受給へは厳正に対処すべきで、保護から抜け出すための自立の手助けや、最低賃金が生活保護水準を下回る「逆転」現象など解決しなければならない問題は多い。

 しかし生活保護を受給する世帯の半数近くはお年寄りである。障がいのある人や病気の人が3割を占め、母子家庭も1割近くいる。

 不正受給の総額は生活保護費のうちの0・4%。過度な引き締めは、本当に必要な人まで制度を利用しにくくする。

 世論による生活保護たたきを背景に、制度批判に走る風潮には危うさが漂う。

   ■     ■

 団塊世代が80代となる2030年、人口の3分の1は高齢者となる。男性の3割、女性の2割は生涯独身だ。 

 一方、非正規労働者の数はこの25年間で急増。働く人の3人に1人に上っている。

 正社員の夫がそれなりの給料をもらって、妻と子どもを養うという標準家庭モデルはすでに崩壊している。

 いくら伝統的な家族や共同体の価値を叫んでも、その空間が縮小しているのだから、力を発揮することはできない。むしろ個人と個人がつながる「共助」を再構築し、単身世帯の抱えるリスクに対応する新しい「公助」で後押しすべきだ。








0 件のコメント: