2012年10月6日土曜日

復興予算の流用、不適切な使途 ようやく調査にとりかかるが・・・? 官庁改修120億円 反捕鯨対策(天下り団体)23億円 防衛省も悪乗り


東京新聞
これが復興予算か 国会・政府やっと調査
2012年10月5日 07時03分
 東日本大震災の復興予算が、被災地の再建と無関係な事業などに使われていると指摘される問題で、国会と政府が遅まきながら調査に乗り出し始めた。被災地支援のために、投入された国民の税金が無駄遣いされている実態にどこまでメスを入れられるかが課題だ。ただ、説明を求められた官僚は「日本再生に向けた政府方針に沿って使っている」の一点張り。与党側からは腰の引けた対応も目につく。 (生島章弘)

 衆院決算行政監視委員会(新藤義孝委員長)の平将明理事(自民)は四日、本紙の取材に「二十五年も増税して財源をつくるのに、不適切と思える事業が多い」と述べた。
 同委員会の野党理事は三日、復興財源の使途が不適切だと思える事業に関し、財務省など担当省庁の幹部から事情聴取した。
 この中で、北海道と埼玉県の刑務所で利用する小型油圧ショベルなどを約三千万円で購入した件について、法務省は北海道と埼玉県は被災地に近く、がれき撤去などの仕事に就くための職業訓練に必要と主張した。
 企業の設備投資を国が一部負担する事業(約三千億円)をめぐっては、経済産業省は被災地と取引があるとの理由で、中部や近畿地方の会社を補助対象にしたと説明。このため、岩手、宮城、福島の被災三県には全体の一割未満しか事業費が支出されなかった。
 また沖縄県の国道整備や、首都圏などの国税庁関連施設の耐震化工事などに充てられたケースもあった。本紙取材で、復興とは直接関係のない原子力関連の研究費に流用されていたことも発覚した。
 不適切な使途がまかり通っている理由は、政府が昨年七月にまとめた復興基本方針にある。復興財源で被災地再建に加え「日本再生」にも取り組むと明記した。これにより、復興予算の使途は被災地に限定されないというのが官僚の論理だ。
 野党は「話にならないものがある」と、来週にも同委員会の閉会中審査を求める方針だが、与党理事は消極的な姿勢を示している。
 一方、政府の行政刷新会議は二〇一二年度の全事業について、各府省が予算執行状況を点検した「行政事業レビュー(見直し)」を分析することで、不適切との指摘がある事業についてチェックを進めている。不適切だと判断すれば、各府省に見直しの必要性を指摘する考えだ。
 ただ、復興関連を含め五千事業もあり、復興関連事業に焦点を絞ったチェックが行われているわけではない。漫然と精査すれば、どこまで無駄に切り込めるかは見通せない。
 政府は復興予算として、住民税や所得税の増税などで一一年度から五年間で計十九兆円を確保。所得税は一三年一月から二十五年間増税される。
(東京新聞)

朝日新聞
復興予算で官庁改修 防災名目、120億円使用
2012年10月6日5時58分

 東日本大震災の復興予算が、全国の官庁施設約100カ所の耐震補強などに約120億円使われ、来年度予算でも60億円要求されていることがわかった。被災地では復興に必要な予算が届かない例もあるのに、「防災」を名目に官庁の改修費がふくらんでいる。

 朝日新聞は官庁施設の多くを管理する国土交通省と財務省(国税庁)の復興予算を調べた。2011年度、12年度の復興予算からは国交省が約100億円、国税庁が約20億円を官庁施設の改修費などに回していた。13年度予算の概算要求でも国交省が57億円、国税庁が3億円を求めている。

 これらは、「5年で19兆円」と見込む復興予算のうち1兆円をつぎこむ予定の「全国防災対策費」から出ている。政府が昨年7月につくった復興基本方針で、震災を教訓にして防災を進める場合は被災地以外でも耐震化などに使えることになっている。

毎日JP
復興予算:「反捕鯨対策」に石巻から疑問の声
毎日新聞 2012年10月05日 19時37分(最終更新 10月05日 23時42分)

 東日本大震災の復興予算が本来の目的と離れて使われている問題で、農林水産省が22億8400万円を投じて昨年度実施した「鯨類捕獲調査安定化推進対策」事業も、反捕鯨団体の妨害対策や調査捕鯨の資金不足の補填(ほてん)に充てられていた。捕鯨関連業者が集まる被災地・宮城県石巻市でも「復興予算と言われても、ぴんとこない」といった声が聞かれる。

 石巻市や地元関係者によると、乗組員など調査捕鯨関係者の約1割に当たる25人程度が石巻市民。市内には鯨の加工品製造業者が2社あり、津波で倒れた巨大な缶詰形タンクで有名になった「木の屋石巻水産」は被災して県外で操業を再開している。

 水産庁は「鯨の関連産業は大きくはないが一定ある。鯨肉の安定供給が復興につながる」と強調。5日の閣議後記者会見で郡司彰農相も「120社、1200人の従業員がいる」と述べたが、これは末端の小売店や料理店の従業員まで含めた数字とみられる。また、捕れた鯨は一度東京に水揚げされるが、東北に運ばれるのは震災前でも全体の1割台だった。

 今回の事業で水産庁が安定供給をうたう背景には、調査捕鯨の運営費不足がある。調査捕鯨は捕った鯨を調査副産物として販売し、その収入で運営。09年度収入は507頭で27億円だったが、10年度は反捕鯨団体「シーシェパード」(SS)の妨害で調査を打ち切ったため172頭、9億円にとどまった。

 復興予算のうち約18億円は、調査捕鯨の実施主体の財団法人「日本鯨類研究所」に支払われた。水産庁は「偶然」としているが、SSの妨害で目減りした収入とほぼ一致する。残りの約5億円がSS対策のため水産庁監視船を派遣する費用だった。

 石巻市の関係者によると、復興予算を投じた調査捕鯨で「石巻には一頭も入っていない」という。市水産課は「乗組員に市民がいるので、SS対策は市民の安全を守ることになる。現地の復興も捕鯨対策もどちらも必要だ」との見解。一方、木の屋石巻水産の担当者は「調査捕鯨全体の将来を考えると今回のような事業は必要だと思うが、いま役に立っているかはわからない」と語った。

 石巻魚市場によると、漁業、水産業の復旧は震災前の3割程度。震災で漁船を流された男性(61)は「原発事故の影響で満足に漁もできず、将来的な見通しも立たないのに国の対策は遅々として進まない。調査捕鯨も大切だが、税金の使い方を考えてほしい」と希望した。【神足俊輔】

中日新聞
復興予算、天下り捕鯨団体に 23億円
2012年10月6日 10時07分
 東日本大震災の復興予算が、南極海での調査捕鯨事業に23億円使われたうえ、実際に被害を受けた捕鯨基地の宮城県石巻市から「地元には恩恵がない」と批判が出ていることが分かった。補助金を受けて調査捕鯨をするのは、一昨年まで水産庁OBが歴代トップを務めた財団法人「日本鯨類研究所」(東京)で、捕鯨の母船は広島県が基地。沿岸地域の復興が進まない中で、被災地とは関係の薄い事業に巨額の税金が投入されていた。
 水産庁が2011年度の第3次補正予算で復興予算に計上した。調査捕鯨費として18億円を支出、米反捕鯨団体シー・シェパードの妨害から捕鯨船を守るために派遣する監視船など護衛費用に4億8千万円を使った。
 日本鯨類研究所は2年前まで元水産庁次長が理事長を務め、直近の5年間も役員10人のうち3、4人を天下りが占めている。
 調査捕鯨には約50億円規模の費用がかかり、予算措置と鯨肉の販売収入でまかなう。これまで一般会計予算に毎年約5億~9億円を計上。11年度は当初の約7億円に復興予算23億円を加え、30億円に膨らんだ。
 11年度は反捕鯨団体の妨害で南極海の調査捕鯨を中断、捕獲数が前年度の3分の1の670トンに減って販売収入も減少。財団は8億7千万円の債務超過になり、12年度の調査捕鯨費も不足した。これを穴埋めする形で復興予算を要求した。
 石巻市によると、鯨肉を加工、販売する事業者は震災前に8社あったが、再開できたのは半数。このうち津波で流された加工食品工場は、別途、申請した中小企業庁の補助金で再建費用を用立てる。
 事業者らは「巨額の税金投入と言われても鯨肉の仕入れ値は下がらず、経営は苦しいまま。恩恵は感じない」「沿岸捕鯨だけで地元で使う鯨肉は足りる」と話す。
 復興とは直接関係がない事業だとの批判に対し、水産庁は「鯨肉の水産加工の盛んな石巻市周辺に、南極海の鯨肉を安定供給することが復旧・復興につながる」と説明する。
 捕鯨問題に詳しい東北大の石井敦准教授(環境政治)は「事業が予算額に見合っているか、効果的かを検証する仕組みが日本にないという問題が象徴的に表れている」と述べた。
(中日新聞)

しんぶん赤旗 2012年10月6日(土)
防衛省の予算流用 復興相も「いかがなものか」
復興に“悪乗り”
NBC(核生物化学兵器)偵察車25億円も
   
 戦闘機操縦士のアメリカでの教育訓練、全国各地の自衛隊駐屯地の浴場や医務室などの建て替えや、給水施設、汚水管の改修―。防衛省による復興予算の流用は、まさに“悪乗り”です。こんなことが許されるのか―。

 防衛省が復興財源を使って、「被災地復興」とは全然関係のない使い方をしている問題は、日本共産党の佐々木憲昭議員が、3月の衆院財務金融委員会で追及しました。

輸送機購入は「震災減耗分」

 佐々木氏は、仮設住宅で暮らす被災者が「温かいお風呂に入りたい」と、昨年の夏から要望が出されていたのに、追いだき機能の付いた風呂を設置しなかった問題を「非常に無神経だ」と指摘。その一方で、2011年度第3次補正予算にC130輸送機6機分(約150億円)、C2輸送機2機分(約290億円)の計約440億円分をもぐりこませていることを示し、「復興のためのお金を利用するなど、とんでもない。悪乗りだ」「仮設住宅5万戸のお風呂の追いだき機能を取り付ける改修費用は輸送機を1機やめればいい」と厳しく批判しました。

 このとき、神風(じんぷう)英男防衛政務官(当時)は、自衛隊の輸送機であるYS11、C1が、東日本大震災に際して被災者の救助にあたる自衛隊の人員、物資の輸送や全国からの支援物資の輸送などに全力であたったことによる「飛行時間の急激な増加」で、「運用停止期間が前倒しで到来した」などと強調。「減耗分」を回復する経費だ、などと輸送機を復興予算で購入することを合理化しました。

 12年度予算、13年度概算要求でも、「被災地復興」とは関係のない“悪乗り”が見られます。

 熊本市の健軍駐屯地の浴場などを建て替えていたのは、防衛省所管の復興予算のうち、「施設整備費(工事費)」。これを調べると、「仙台駐屯地損傷復旧」など直接、被災地にかかわると思われるものを除くと、12年度予算で約225億円、13年度概算要求は約285億円にものぼります。

 医務室を建て替えたのは、幌別(北海道登別市)、北千歳(同千歳市)、島松(同恵庭市)の各駐屯地。岩見沢(同岩見沢市)、出雲(島根県出雲市)の両駐屯地では、給水施設を改修しています。

那覇駐屯地は汚水管の改修

 このほか、屋外燃料置き場を改修したのは安平(北海道安平町)、北宇都宮(宇都宮市)、健軍の各駐屯地。対馬駐屯地(長崎県対馬市)は、浄化槽の建て替えをおこない、那覇駐屯地(沖縄県那覇市)は、汚水管の改修まで。

 これさいわい、とばかりに、旭川(北海道)と三重の両地方協力本部は、庁舎の増改修。「検査・火工場」や「化学火工品庫」の建て替えをしている駐屯地もあります。

 13年度概算要求でも、「食厨改修」「ボイラー室改修」「整備格納庫建て替え」など、被災地とは関係ない駐屯地での工事がズラリと並んでいます。

 このほか、無人偵察機システムの機能付加(12年度予算、9800万円)、「NBC(核生物化学兵器)偵察車」(13年度概算要求、約24億8400万円)といった物騒なものまであります。

 13年度概算要求で、「災害派遣被服の整備」「予備自衛官等個人装具の整備」「部隊被服の整備」など被服費を約2億3000万円要求するなど、一般会計で要求すればいいものまであります。

 復興予算が被災地とは直接関係のない地域や事業に使われていることについて、平野達男復興相は、9月19日の記者会見で、「増税をして財源を確保したものの、使い道としてはいかがなものか」などといわざるをえなくなっています。国民に所得税、住民税の増税をして確保した復興財源であり、その使い道には、国民的監視が必要です。




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