2012年10月28日日曜日

改正労働法に例外・抜け穴 審議会の労働者代表は連合(組織率18.5%)のみ

東京新聞
<はたらく>労働法改正 現場の声遠く 審議会、連合のみが代表 
2012年10月26日

 「正社員で六十歳まで」といった従来の働き方が変わる中、先の国会では労働関係の法改正が相次いだ。派遣切り、雇い止めに歯止めをかけ、高齢者も働けることを目指す内容だが、現場からは「まだ認識不足」との不満が漏れる。背景には、労働組合の声は必ずしも労働者のそれではない、という問題がある。 (三浦耕喜)

 先の国会では労働者派遣法、労働契約法、高齢者雇用安定法が改正された。改正派遣法は三十日以内の日雇い派遣を原則禁止。改正契約法は有期の雇用契約でも五年を超えて連続して働けば、無期に転換できるとした。改正安定法は、六十五歳までの継続雇用を企業に義務付けた。
 だが、改正労働者派遣法は民主、自民、公明三党の修正合意で、派遣切りの要因とされる登録型派遣と製造業派遣を原則禁止する規定が削られた。

 改正労働契約法にも抜け穴がある。三カ月の雇用契約を七十六回繰り返された末、雇い止めされた神奈川県横須賀市の男性(57)は、「五年の根拠が分からない。できるだけ長く有期で使い回したい企業の利益が優先されたのでは」と言う。

 改正高齢者雇用安定法も継続雇用の義務に例外を残す。勤務状態によっては対象外とする指針を厚生労働省が示したためだ。大阪市に住む鉄道会社勤務の男性(53)は、社規違反を理由に六十歳以降は再雇用しないと通告された。「確認の指先と視点が一致していない」という類いの違反だ。「これでは、会社のやりたい放題。明確な基準づくりが必要なのに、詰めた議論がない」と批判する。

 こうした不満を突き詰めると、「現場の声が政治に届いていない」という不信感がある。国の労働政策は厚労省の労働政策審議会(労政審)で検討される。労政審は有識者、使用者、労働者の代表計三十人で構成。労働者代表の十人は、全員が連合系の労働組合から選ばれている。
 連合は労組の日本最大の全国中央組織で、全組合員の67・3%を占める。だが、非正規労働者が増加し、労組加入者自体が少数派だ。いずれかの労組加入者の割合を示す組織率は、一九八〇年代に三割を割り、現在は18・5%。連合は全労働者の一割少々をカバーしているにすぎない。
 さらに、ねじれ国会で連合が支持する民主党政権は、野党の協力なしには法案は通せない。妥協に応じざるを得ない構造になっている。

 非連合系の全国一般労働組合全国協議会の平賀雄次郎委員長は「今や非正規雇用が三割を超えた。組織率の問題もある。連合だけが働く現場を代弁しているのは不合理だ」と話す。
 連合も手をこまねいているわけではない。二〇〇一年にパートや非正規労働者も組織化する運動方針を決定。〇三年には非正規労働者らによる全国コミュニティ・ユニオン連合会(全国ユニオン)が連合に加盟した。
 ただ、声を吸い上げる力は不十分だ。弁護士で日本労働弁護団の宮里邦雄会長は「連合は大きな組合ばかりではなく、全国ユニオンからも労政審に委員を送ってはどうか」と言う。
 非正規労組プレカリアートユニオンの清水直子書記長は「非正規労働者を守らなければ、正規の労働者もリスクにさらされる。働く者すべてに共通する目標は多いはずだ」と共闘を呼び掛けている。

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