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「上官の命令は絶対」で沈黙…日常的に性的暴行受ける米軍新兵女性
2012.7.4 11:01
上官らによる性的暴行の被害にあった元米軍兵士の女性らに取材したドキュメンタリー映画「インビジブル・ウォー」が米国で公開され、その実態に関心が高まっている。「上官の命令は絶対」などの軍の風土が、被害女性を沈黙させているとみられる。テキサス州の空軍基地では、教官らが日常的に新兵に関係を迫っていたというスキャンダルが持ち上がっている。きょうのテーマは「兵舎での性的暴行」とした。(SANKEI EXPRESS)
女性兵士の戦争
「インビジブル・ウォー(The Invisible War)」は独立系映画を対象にしたサンダンス映画祭(1月、ユタ州)の長編ドキュメンタリー部門観客賞受賞作品。米軍内では、レイプなど性的暴行は2011年、3192件が報告された。だが、組織と事の性格上、被害が届けられないケースが多いとみられ、国防総省では、実態は年間約1万9000件とみている。
映画では、性的暴行の被害を受けたが上官から事件にしないよう言い含められたという元兵士の女性らがカメラの前で当時の苦しみを語っている。監督、カービー・ディックさんは、軍内での性的暴行の加害者は、上官の命令に従う、仲間の犠牲になることをいとわない、といった軍の“精神”を悪用していると米公共ラジオ(NPR)に指摘した。
国防総省が新ルール
レオン・パネッタ国防長官(74)は4月、米軍内での性的暴行をなくすための新たなルールの導入を発表した。ロサンゼルス・タイムズによると、パネッタ長官は発表の2日前、DVDで「インビジブル・ウォー」を見た。国防総省の報道官は「長官は映画を見て、この問題に取り組む決意を新たにした。性的暴行はこの国であってはならないことであり、軍も例外ではない」と語った。
新ルールでは、被害を訴え出た女性は異動が可能になる。これまでは調査中は引き続き、告訴した上官や同僚と一緒に仕事をしなければならなかった。また、レイプの証拠は50年間保存されることになった。そのとき決心がつかなくとも、あとでいつでも告訴することができるわけだ。
最も重要なのは、性的暴行の問題を受け付け処理するのは、大佐以上の幹部としたことだという。軍では問題が起きれば直属の上官に伝えるのが筋だ。だが、現場の指揮官は自分の部隊の規律の乱れを知らせたくない。また、直属の上官が加害者で、泣き寝入りせざるを得ないケースもあった。
教官と新兵の関係
米テキサス州サンアントニオのラックランド空軍基地が、セックススキャンダルに揺れている。AP通信が報じた。この基地には、475人の教官がいて、空軍新兵に訓練を施している。その教官のうち4人が、複数の女性新兵に対して性的暴行や性的いやがらせをしたとして軍法会議にかけられているのだ。
一方、別の教官が先月、女性新兵との不適切な関係で有罪を認めた上、捜査協力を約束して軽い刑を受けたが、その後、この一件とは別に9人の新兵と関係を持っていたことを明らかにした。9人については捜査チームはまったく把握していなかった。つまり、新兵に対する性的暴行、いやがらせが日常的にあるのに、新兵が沈黙しているため明らかになっていないという状況が推測されるのだ。
ラックランド空軍基地では3月に訓練を一時停止し、5900人の新兵を対象に、被害を受けたことはないか、目撃したことはないかを聞いた。幹部教官は新兵が新たにやってくると最初の指示として、「性的暴行、性的いやがらせを受けたらだれかに言うことだ」と命じている。(内畠嗣雅(うちはた・つぐまさ))
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