2013年1月10日木曜日

沖縄タイムス社説 [嘉手納にオスプレイ] 沖縄は日本の何なのか

沖縄タイムス
社説[嘉手納にオスプレイ]沖縄は日本の何なのか
2013年1月10日 09時28分
(13時間10分前に更新)

 軍事基地をめぐる最近の沖縄の動きは尋常でない。負担軽減とは名ばかりで、冷戦時代を思わせる機能強化策が次々に表面化している。

 米政府が、空軍の特殊作戦機CV22オスプレイを嘉手納基地に配備する計画を日本政府に伝達していたことが、共同通信の取材で明らかになった。

 本紙も昨年6月、米軍資料や米国防総省高官の話などをもとに嘉手納への配備計画を報じた。それによると、嘉手納基地の第353特殊作戦群に2015米会計年度(14年10月~15年9月)に5機、16会計年度(15年10月~16年9月)までにさらに4機を配備する予定だ。

 普天間飛行場には海兵隊のMV22オスプレイが12機配備されている。この夏にはさらに12機が追加配備される。空軍のCV22を含めると、30機超のオスプレイが配備されることになる。

 空軍のCV22は特殊作戦用に開発された機種だ。地形追従レーダーを備えているのは、敵のレーダーをくぐって低空で敵地に潜入するためである。

 特殊作戦という任務の性格上、CV22は海兵隊のMV22に比べ事故率が高い。

 嘉手納に配備されれば本島北部や伊江島などで低空飛行訓練、夜間訓練が頻繁に実施されるのは確実である。沖縄の空が海兵隊と空軍のオスプレイによって占領され、平穏な日常が今以上に脅かされてしまうのだ。

 沖縄県民の平和的生存権が脅かされているというのに、政府は何一つ有効な手だてが打てず、全国紙の報道もいたって冷淡だ。

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 異常である。

 県と市町村が昨年10月から11月末まで実施した目視調査では、確認された518件のうち、61・5%にあたる318件が運用ルールに違反していた。

 正月三が日も飛行訓練が実施され、2日には宜野湾市の上大謝名公民館で90でデシベル以上の騒音を10回記録した。その上さらにMV22オスプレイとCV22オスプレイが追加配備されるのである。

 夜間外出禁止令が出ているにもかかわらず、沖縄では、米軍兵による深夜の飲酒行動や民間住宅への侵入事件が相次いでいる。

 それだけではない。防衛省は、13年度予算の概算要求に下地島空港利用を想定した調査研究費を盛り込む考えだ。

 那覇基地に配備されているF15飛行隊をさらにもう1個飛行隊増やし、戦闘機部隊を拡充強化する計画もある。

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 与那国では陸上自衛隊の沿岸監視部隊(100人程度)を常駐させる計画が進んでいる。

 沖縄で顕著なのは、負担軽減ではなく、中国をにらんだ軍事要塞(ようさい)化の動きである。冷戦後、沖縄がこれほど軍事緊張に包まれたことはない。

 日米中に強く自制を求めたい。この地域で3カ国が軍備をエスカレートさせるのは極めて危険である。そこに住む人びとの「人間の安全保障」こそ国を超えて追求されるべきであり、今こそ日米中の戦略対話が必要だ。

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