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“ホームレス”の子ども 10年で85人
12月21日 18時44分
NHKが全国の児童養護施設などにアンケート調査を行ったところ、一時、車上生活や路上生活に陥りホームレス状態になっていた子どもがこの10年で少なくとも85人に上ることが分かりました。
専門家は「安心感のない生活を送ることで子どもたちに深刻な“後遺症”が残るおそれがある」と指摘しています。
NHKは、虐待や貧困が理由で義務教育さえ受けられないなど、社会とのつながりを絶たれる子どもたちを、“消えた”子どもと捉えて実態を把握しようと、全国の児童養護施設など1377か所を対象にアンケート調査を行いました。
その結果、一定期間、社会とのつながりを絶たれた経験のある子どもの数は施設に保護されているだけでもこの10年で1039人に上ることが分かっています。
このうち、親が家賃を払えず住む場所を失ったり、借金の返済から逃れるために親に連れられて夜逃げをしたりして、85人の子どもがホームレス状態になっていたことが新たに分かりました。
車上生活をしていた子どもは61人、路上で暮らしていた子どもが22人、ほかに、ネットカフェなどを転々としていたケースもありました。
施設から寄せられた回答では、「コンビニエンスストアで廃棄されたものを拾って食べていた」という子どもや「劣悪な生活環境で、保護されたときには歯はすべて虫歯だった」という子どももいました。
ホームレス状態の生活を経験した親子の精神的ケアを行っている浜松医科大学の杉山登志郎特任教授は「格差社会が広がればいちばん弱い部分にしわ寄せが来て、子どもでもホームレスになるような極端な事態が起こるということだと思う。子どもたちは安心感のない生活を強いられ基本的な教育やサポートを受けられない状態になるため深刻な“後遺症”が残るおそれがある。セーフティネットを整備するとともに、保護されたあとのケアにも力を入れていく必要がある」と指摘しています。
高校3年の男子生徒は
ホームレス状態になっていた子どもの1人、関東地方の児童養護施設に暮らす高校3年生の男子生徒は小学校に1年半ほど通えませんでした。
父親の仕事上のトラブルで一家6人で夜逃げ同然で家を出て車上生活を余儀なくされました。
夜は公園やスーパーの駐車場で過ごし、風呂にも入れず車の中で体を折るようにして眠ったと言います。
男子生徒は「小さな青い車の中で1つの弁当を家族全員で分けて食べるような生活で、いつまで続くんだろうと思っていた。友達と遊びたいとか、学校に行かせてほしいとか親に言ってみたけれど、『今はお金がないからだめだ』と言われて諦めるしかなかった」と話します。
男子生徒が当時、通っていた小学校の元校長は、突然、来なくなった男子生徒を探していました。
大家の立ち会いの下、部屋の中を確認し、親の実家まで訪ねましたが、手がかりは得られませんでした。
元校長は「警察に捜索願いを出すべきか児童相談所と検討したが、親と一緒にいるとみられたため、事情はあっても子どもは無事だろうと考え、そこまでは踏み切れなかった」と話していました。
男子生徒は父親が死亡したことをきっかけに保護されました。
学校に1年以上、通えなかった影響に苦しみましたが、施設で暮らすようになって初めてスキーやキャンプを経験し、友だちも出来ました。
男子生徒は「当初は勉強の遅れに加えて、同年代の友達と話せなかったことでコミュニケーションにも苦労した。あのままずっと学校に行くことができていなかったら、ずっと孤独だっただろうと思う」と話しています。
道の駅では車上生活の人たちが
道路を利用する人たちの休憩施設として国や自治体が設置している「道の駅」では、車上生活をする人たちの姿が、たびたび目撃されています。
このうち、首都圏近郊の道の駅では、取材に訪れた今月上旬の夜も、車上生活をしているとみられる車が、数台、駐車場にとまっていました。
長距離トラックの運転手などが休憩できるよう24時間開放されていて、トイレや水道もあることから、車上生活者が集まってくるのではないかと道の駅の担当者はみています。
車内で眠っていた男性は、「事情があって、家に帰っていない。毎晩、この駐車場で寝ている」と話していました。
また、埼玉県杉戸町にある「アグリパークゆめすぎと」では、2年ほど前、小学生くらいの男の子と女の子が、両親に連れられて車上生活をしていて、平日の日中も敷地内の公園で遊んでいたということです。
職員の男性は、「学校がある日にきょうだいで遊んでいて、おかしいなと思っていた。毎日同じ服で汚れていて、風呂にも入っていない様子だった」と話していました。
「アグリパークゆめすぎと」の小林朝美社長は、「あまり長い間滞在している人には注意したり、警察に通報したりするが、それぞれ事情があると思うので、どこまで介入するのか判断が難しい」と話していました。
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