2013年6月26日水曜日

安倍政権半年、アベノミクスが生んだもの 一瞬の夢は味わえたけど…  「給料が上がったわけでもないし、株でもうけたわけでもない。何のうまみもないまま、しわ寄せだけ受けた気分です」

SankeiBiz
安倍政権半年、アベノミクスが生んだもの 一瞬の夢は味わえたけど… 
2013.6.26 09:37   

 株高に酔ったものの…

 一瞬の夢は味わえたが、結局は元のもくあみに…。それでも人々は夢を追う。

 「レクサスか、ベンツか」。今年5月、東京都の会社員、平田一雄さん(32)=仮名=の胸は高鳴っていた。就職した10年ほど前、株取引を始めた。リーマン・ショックや東日本大震災による株価急落の憂き目に遭ってきたが、「今回は違う」とも思った。

 安倍晋三首相が打ち出したアベノミクスへの期待感から日経平均株価は続伸。野田佳彦首相(当時)が衆院解散を表明した昨年11月14日に8664円だった終値は5月、1万5000円台を回復した。平田さんの保有株も5月時点での含み益は350万円を超えた。

 国内の投資熱も一気に高まった。株式会社情報誌「会社四季報」を発行する東洋経済新報社によると昨年12月発売の「新春号」の販売部数が前号比5割増。続く「春号」(3月発売)も新春号の3割増と右肩上がりの伸びとなった。

 しかし、5月下旬になって状況は一変する。5月23日に1万5942円を付けたのを最後に株価は下落。1日で1143円も値を下げた。現在も1万3000円前後で推移している。

 平田さんは「1万7000円になったら、売って利益を確定しよう」と決めていた。その頃には利益は600万円を超えている計算。しかし、届かぬまま株価は下落し、含み益の大半が霧散した。

 それでも株価は半年前より高値を維持しており、株取引のセミナーへの参加者も増えている。埼玉県の女性(36)は6月初旬、株取引の基礎講座の門をたたいた。現在は求職中だが、「株で蓄えを少しでも増やせれば」と話す。女性が参加した講座を主催するNPO法人「投資と学習を普及・推進する会」によると、参加者の半数近くが65歳以上の高齢者だ。

日本の個人金融資産は約1400兆円ともいわれ、その半数以上を高齢者が保有しているという。同会の高野喜央課長は「これまで預金されていた退職金などが株取引に流れれば、市場の活性化につながる」と分析する。個人投資家の増加も、アベノミクスの効果かもしれない。

 住宅ローンには…

 「借り換えるなら今かもしれないけど、怖くて踏み切れない。金利が上がらないように祈るしかない」

 昨年、東京都板橋区に新築マンションを購入した会社員、吉本拓也さん(29)=仮名=は途方に暮れていた。変動金利を利用して2800万円のローンを組んだ。銀行の金利優遇を受け、提示された金利は0.875%。定期的に見直しが行われているが、これまで上昇していない。

 しかし、4月に日銀が打ち出した「異次元緩和」によって潮目が変わった。新たに発行する国債の約7割を政府が買い取る施策の結果、思惑通り円安は進み、野田佳彦首相(当時)が衆院解散を表明した昨年11月14日の80円24銭が5月10日には100円を突破、現在97円台で推移している。

 ただ、狙いとは裏腹に住宅ローン金利の指標となる長期国債の利回りが上昇。5月には、大手銀行が住宅ローンの固定金利を引き上げた。6月の10年固定の金利は3.800%(優遇前)で、4月と比べて0.25ポイント上昇している。

 金利上昇が続けば、変動金利が現在の固定金利の利率を上回る日が来るかもしれない。これ以上、金利が上昇する前に固定金利に借り換えるべきか-。

 コンサルティング業「住まいと保険と資産管理」(東京都千代田区)。住宅に関する相談は今年に入り、前年同期比5割増で推移している。住まい部門の飯田敏(さとし)マネジャー(49)は「安倍政権の経済施策による金利上昇を懸念して、相談に来る人が増えているようだ」と分析する。

 すでに金利上昇のあおりを食ったケースもある。ある30代の夫婦は、都内の新築住宅を購入するため全期間固定金利で3800万円のローンを組み、6月に引き渡しを予定していた。

 だが、引き渡し直前になって金利が0.3ポイント上昇。そのため、5月に引き渡しを受けた場合と比べ返済総額が約250万円も増加した。

 吉本さんは「給料が上がったわけでもないし、株でもうけたわけでもない。何のうまみもないまま、しわ寄せだけ受けた気分です」と肩を落とした。



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