大杉栄とその時代年表(254) 1898(明治31)年11月1日~10日 「東亜同文会」設立 憲政本党結成(旧進歩派) 第2次山県内閣成立(超然内閣復活) 『ホトトギス』第2巻第2号(子規『車上所見』『雲』『山』、漱石『不言之言』) より続く
1898(明治31)年
11月11日
梁啓超、横浜華僑の鴻鏡如らの資金援助を受けて、横浜に移り『清議報』(10日毎に発行するミニコミ紙)を創刊。
この年の冬、梁啓超は「戊戌政変」に関する記事を連載し、後に『戊戌政変記』として1冊にまとめる。
この頃から、孫文ら過激な「革命派」に比べて、穏健な梁啓超が「改良派」と呼ばれるようになる。
11月12日
室田忠七の鉱毒事件日誌より
東京の鉱毒事務所より室田宛に書面が届く。そこには堤防築造について、吾妻・植野・界と久野の間で利害対立を煽る動きがあることが次のように述べられている。また1500万円の渡良瀬川改修大計画が図られていることが述べられている。
「四方八方ヨリノ通信ニ依レバ驚入候。果シテ其ノ事実ノ真偽ハ知ラザレトモ、近頃マタ加害者ノ間牒(諜)村々ニ出没、堤防新設ニ付回シ吾妻・植野・界・久野ノ間ヲ離間シ、夫レガタメ一般被害民ハ非常熱心ナルニモ関カワラズ、堂々タル有名ノ有志ニシテ瞞着セラレ、二十九年以来堤防請願ノ貫徹シテ漸ク茲ニ至リ一千五百万円大事業トナリ。素人ニテハ到底分ラザル大経画ナルニ、各々字々ニ割拠シテ眼小豆ノ如ク亦タ近眼ニシテ一寸先ハ真暗ニシテ愚論ヲ唱フルハ、一般ノ利害ヲ省リミズ政府ノ事業及ヒ外村々ノ妨害ヲ為スモノナリ」
11月12日
ジョン・中浜万次郎(72)、没。
11月18日
近衛秀麿、誕生。
11月20日
高等師範学校と高等商業学校との軟式テニス試合。テニス試合のはじめ。
11月22日
二葉亭四迷、海軍編修書記となる。月給50円。~明治32年7月頃。
26日、父吉数(60)、没。
11月23日
朝鮮、万民協会参加の市民学生による皇国協会本部襲撃、死傷者多数
11月23日
漱石、狩野亨吉から、文部大臣が第一高等学校校長に推薦した件を聞く。
11月29日
朝鮮、独立協会の議会設立の要求が受諾され、中枢院議員50人が選出される。万民共同会の会長尹始炳と李承晩が含まれているが、独立協会および万民共同会の関係者は過半数に及ばない17 人にとどまる。
11月29日
労働組合期成会幹事会、高野房太郎、常任幹事を辞任。後任片山潜。同日鉄工組合の参事会でも、高野、常任委員辞任。
11月29日
徳富蘆花「不如帰」連載(「国民新聞」11月29日~翌年5月24日)。
改稿して、1900年(明治33年)1月15日、民友社から『小説 不如帰』が刊行されベストセラーに。
初版1000部は1ヶ月で完売、2年間で1万部を売り上げ、蘆花が没した昭和2年には190版を重ね、50万部を売りつくしたという。虚子は「小説に 涙を落とす 火鉢かな」の句を詠んでいる。
11月30日
山県首相、憲政党代議士を招き茶話会を開催、憲政党との提携成立を声明。
隈板内閣陸相桂太郎、憲政本党成立後、主に星亨を通して憲政党との間に提携交渉を開始。第1次山県内閣下の第1議会で自由党土佐派と妥協して局面を打開して以来、桂と自由党系との間には「友誼上の関繋」が維持されている。
提携は第13議会直前に3条件で妥結。
①現内閣は超然主義を執るものにあらずとの宣言を発する。憲政党と提携して議会に臨む旨を公然発表する。
②憲政党の綱領を採用する(選挙権拡張や鉄道国有等の積極政策を政府が法案提出する)。③憲政党と利害休戚を同じうする(議会後に憲政党員を閣僚・官吏へ登用)。提携方式による超然主義の修正。
超然主義変質を促進させるが、同時にそれに伴う政党勢力の進出に対抗する措置も打ち出す。
①1900年5月、陸軍省官制・海軍省官制改正により、陸海軍両大臣・両次官の現役将官専任制を確立。陸海軍両大臣は現役の大将・中将、次官は現役の中将・少将を補任するものとする。
②1899年3月公布の文官任用令改正、文官分限令制定、文官懲戒令制定により専門官僚制を徹底させ、政党員の就官増大に歯止めをかける。
12月
後藤宙外「新機軸」(春陽堂)
12月
河井酔茗、河野鉄南、宅雁月ら、浪華青年文学会堺支会を結成、酔茗宅に本部を置く。与謝野晶子の弟籌三郎も会員。
12月
狩野亨吉が第一高等学校校長に転出。
12月
パリ、画商アンブロワーズ・ヴォラール(1865~1939)がゴーギャン(50)作品に関心を示し始める。
12月3日
第13議会(衆院議長は憲政党片岡健吉)。~明治32年3月9日。
第2次山県内閣、憲政党を抱込み地租増徴案通過させる。一方で、議員歳費800円を2000円に増額する案を提案。田中正造、憲政本党を代表して反対演説。議会通過後、正造は歳費全額を辞退。
12月4日
東京音楽学校、定期演奏会。
つづく
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