2013年5月22日水曜日

責任転嫁大王 「メディアや議会のこうしたアイマイな態度が、政治家の無責任な発言を許してきたのではなかったか。」(斎藤美奈子「東京新聞」)


暴言は連鎖する。

「軍と売春はつきもの」と述べた日本維新の会の石原慎太郎共同代表。
「韓国人の売春婦がウヨウヨ」とは西村真悟議員。
いずれも橋下徹大阪市長の慰安婦は「必要だった」発言から派生した言葉だ。
石原、西村両氏はもともと差別発言大王である。
維新の会の人材の豊富さに感心するが、同党の対応もむちゃくちゃである。
石原氏は放置。西村氏は除籍。当の橋下氏は全方位的に侮辱的な暴言を吐きまくっている。

「性奴隷」という海外報道に不満を述べ、米政府の批判には「アンフェアだ」。
メディアには「大誤報をやられた」といい、あげく「もう囲み会見はしない」。
「日本人の読解力不足」にいたっては支離滅裂。

責任転嫁大王である。

しかし、社説で橋下発言を批判した新聞各紙はなぜあっさり会見を再開させたのだろう。
その前に「大誤報」への訂正と謝罪を求めるのが先じゃないのか。

自民党ほか各党の大阪市議会議員は、なぜ市長の不信任案を提出しないのだろう。
党幹部の橋下批判は耳に入らなかったのか。

メディアや議会のこうしたアイマイな態度が、歴史認識をめぐって二転三転する安倍普三首相を含め、政治家の無責任な発言を許してきたのではなかったか。
記者も議員も責任をともなう言論の当事者なのだ。見物人みたいなふりしてちゃダメだよ。 
(文芸評論家)

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