『大岡昇平 歴史小説集成』 大岡昇平著 : 読売新聞— 黙翁 (@TsukadaSatoshi) 2017年2月22日
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無名であれ、有名であれ、自らの役割を生ききった人間への共感にあふれる。仲間の英霊たちを生涯、鎮魂した作家の歴史観が光る。(中公文庫、1000円)
幕府軍艦奉行の勝海舟を斬るつもりで訪ねたら一喝され、弟子になったという坂本竜馬の逸話がある。作家大岡昇平は、この手の英雄譚にはにべもない。〈これは変心を合理化するために永遠に繰り返される作り話〉と本書収録「竜馬殺し」で書いている。
(略)
収録作「高杉晋作」では、奇兵隊の決起が成功した後、「人は艱難を共にすべきも、安楽を共にすべきではない」として、隊の実権を手放した晋作のエピソードが静かに語られる。無名であれ、有名であれ、自らの役割を生ききった人間への共感にあふれる。仲間の英霊たちを生涯、鎮魂した作家の歴史観が光る。(中公文庫、1000円)(鵜)
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