藤原定家と為家:父子の肉筆ならぶ…俊成90歳の歌会記録
毎日新聞 2015年03月05日 07時00分
◇都内で確認、専門家「重要文化財クラスの一級資料」
平安時代末期〜鎌倉時代初めの歌人、藤原俊成の90歳の祝いの歌会の様子を、息子で新古今和歌集編者の定家と、その息子の為家が記録した自筆原本が4日、東京都内で確認された。この記録の原本が表に出たのは初めて。定家・為家父子の肉筆が並ぶのは極めて珍しいといい、専門家は「重要文化財クラスの一級資料」と評価している。
歌会は建仁3(1203)年、後鳥羽上皇が開いた。和紙5枚を継いだ巻物で縦約30センチ、横約2.5メートル。江戸時代前期に表装されたとみられる。20首以上の歌を、歌人で能筆家としても知られる為家が記した。さらに末尾には定家が、参加者の名前と「若草」「納涼」「紅葉」「雪」などの歌題を加筆している。
また、定家の加筆部分は、もともと4枚目の裏に書かれていたものが後にはがされ、継ぎ足されたとみられ、紙にしみた墨が「鏡文字」として残っている。
歌会の時に為家は5歳で、成人した後、定家が没する1241年までに、俊成の栄誉を伝えようとしたとみられる。巻物の添え紙などから、もとは定家の流れをくむ冷泉家に伝わっていたが、江戸時代初めに宮中に移され、そのまま残ったと推察される。
この歌会の記録は「俊成卿九十賀和歌」として複数の写本が伝わっている。今回確認された原本では、記された和歌の一部が写本と異なり、国文学研究の上からも貴重な資料といえる。
コレクターが所蔵していたものを昨年、都内の古典籍業者が入手。5〜7日に東京都千代田区のホテルグランドパレスで開かれる古書展示販売会に出品される。【栗原俊雄、斉藤希史子】
元国文学研究資料館館長の松野陽一・東北大学名誉教授(和歌史)の話 筆跡などから定家、為家の真筆に間違いない。写本はあるが、人間が手で写すので書き間違いもある。原本が最も大事で、一級資料、少なくとも重要文化財級だ。書体から為家が若いころ書いたものではないか。
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