2013年8月7日水曜日

三党の協議の枠組みは崩壊 一体改革ほご 増税根拠も崩れ 一体改革は消費税増税だけの「一方改革」に変質

東京新聞
一体改革ほご 増税根拠も崩れ    
2013年8月6日 朝刊

民主党が社会保障制度改革に関する自民、公明両党との実務者協議から離脱したことで、三党の協議の枠組みは崩壊し、年金や医療の抜本改革は見送られた。政府の社会保障制度改革国民会議がまとめた最終報告書には国民への負担増ばかりが目立ち、社会保障の将来像は盛り込まれなかった。社会保障と税の一体改革は消費税増税と社会保障の充実・強化の両輪のはずだが、国民が安心できる社会保障制度像を示さないまま、消費税増税だけが進められようとしている。

民主党が与党だった昨年八月、野田政権は消費税増税を柱とする一体改革関連法を成立させた。この際、自民、公明、民主の三党は増税による増収は全額、社会保障制度の充実・強化に充てることで合意した。このため、三党は国会議員による実務者協議と有識者による国民会議を設け、改革案を一年かけて、まとめることにした。

だが、関連法が成立した時点で、すでに社会保障をめぐる協議が破綻する兆しはあった。民主党と自公両党との考えには大きな溝があったからだ。

民主党は持論である後期高齢者医療制度の廃止や最低保障年金制度の導入を主張。自公両党は受け入れる考えはなかったものの、消費税増税を実現させる点で民主党と一致していたため、協議のテーブルにだけはついた。

三党は昨年十一月以降、社会保障制度改革に関する実務者協議を重ねた。ただ、現行制度の手直しを主張する自公両党と抜本改革を求める民主党の主張は平行線をたどった。その途中で政権は自公両党に移り、七月の参院選直前に協議は中断してしまった。

有識者でつくる国民会議も、三党の協議がまとまらない以上、民主党が主張するような抜本改革は取り入れられない。それどころか五日にまとめた報告書では、介護保険で「要支援」の人をサービス対象から切り離すなど、国民に負担増を求める項目が多く書き込まれた。安倍自民党の掲げる家族や地域の負担を重くし、社会保障費を抑える「自助」の視点が色濃く反映された。

三党が消費税増税関連法を成立させてから一年。増税で国民が安心できる社会保障制度がつくられるはずではなかったのか、という国民の疑問だけが残った。

消費税増税が十月にも正式決定されれば、税と社会保障の双方で国民に負担増が押し寄せる。一体改革は消費税増税だけの「一方改革」に変質した。 (関口克己)

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