2016年8月8日月曜日

天才たちの芸術革命 フィレンツェ ”ルネサンス”物語 (その1 ; ロレンツォ・ギベルティとフィリポ・ブルネレスキの闘い) (美の巨人たち2016-06-16)

天才たちの芸術革命 フィレンツェ ”ルネサンス”物語 (その1)
(美の巨人たち2016-06-16)


14世紀初め、イタリアのフィレンツェでは、毛織物業や金融業で莫大な富を得た市民たちが市政をを左右する力を持ち、フィレンツェをトスカーナ地方の最大の都市に作り上げた。
この時代に起きた芸術の運動がルネサンス(再生・復活を意味する)で、古典や古代文化の復興を目指す運動が起こった。
「神も美しいが、人間も美しく価値がある」という人間性の回復という価値観が生まれた。
フィレンツェの富裕層は、芸術家たちのパトロンとなって建築・彫刻・絵画など様々な芸術を庇護するようになり、街は美しく変貌した。

『ルネサンス芸術家列伝』を著したジョルジョ・ヴァザーリ(1511-74)

■ルネサンスが花開いた建築
サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂は、ルネサンス黎明期の1436年に完成した大聖堂。
「花の大聖堂」と呼ばれ愛されてきた。
13世紀から約140年をかけて建築されたため後期ゴシックとルネサンス様式が混在している。
白・緑・ピンクの大理石を幾何学模様に配し、華やかな外観を作り出している。
全長153m、八角形のドームの直径は45m。
この巨大なドームはルネサンス初期の最高傑作と言われている。



ドームの設計を手がけたのはフィリッポ・ブルネレスキ(1377-1446)。
石積みのドームとしては現在でも世界一の大きさ。
内部は1,500人規模のミサができる広さがある。
ステンドグラスはルネサンスの芸術家たちの作品で彩られ、
高さ約100mの天井には16世紀にジョルジョ・ヴァザーリが描いたフレスコ画「最後の審判」が。


大聖堂広場には重要な建物が他に2つある。
画家・建築家ジョットの構想で建てられたジョットの鐘楼(1387年完成)は高さ84mの塔の屋根にのぼることができる。

大聖堂の前には11世紀に創建されたサン・ジョヴァンニ洗礼堂(15世紀に改修)。
洗礼堂の東側の扉はミケランジェロが「天国へ向かうにふさわしい門」と称賛したことから「天国の門」(1452年完成)と名付けられた。
作者は、ルネサンス初期を代表する芸術家ロレンツォ・ギベルティ。



■ギベルティ vs ブルネレスキ
扉の制作はコンペで決まった。
2人の芸術家(ロレンツォ・ギベルティとフィリッポ・ブルネレスキ)が競った。
歳はブルネレスキが1つ上で、当時は2人とも20代。
ギベルティは手先が器用で、商才にも長け、父親とともに大きな工房をかまえていた。
一方、ブルネレスキは頑固で神経質で職人気質であった。
コンペのテーマは旧約聖書からイサクの犠牲となった(アブラハムが息子イサクを生贄に捧げるよう神に命じられた場面)。
ギベルティは、父親がイサクに手をかける激しい場面でもタンタンと表し、整然とした構成。
ブルネレスキは、父親の激しい葛藤を表現するために、パネルからはみ出さんばかりの躍動的な構成。
二人の性格がよく現れたものであった。
審査員たちは迷いに迷い、2人の共同製作に決定した。
しかし、1人でなければ勝利したことにならないと、1402年、ブルネレスキは建築を学ぶためにローマへ行ってしまい、その結果、ギベルティが選ばれた。




■再び因縁の対決
扉のコンペから16年後、大聖堂のドーム建築のコンペが行われることを知ったブルネレスキはフィレンツェに戻って来た。
大聖堂のドームは世、界最大の大きさで、何十年も計画されながらも実現できずにいたが、ブルネレスキには自信があった。
しかし、又もこのコンペにはギベルティも参加していた。
コンペにはブルネレスキが勝ったものの、羊毛組合はブルネレスキ1人でやり遂げられるか不安になりギベルティとの共同製作を指示した。
それに対し、ブルネレスキは仮病を使い工事をボイコット。
ギベルティは当惑した。そして、ドームの模型すら完成させることができず音を上げてしまった。
その結果、今回は、思惑通りブルネレスキが建築主任となった。



■世界最大のドームの誕生
ドームは八角形にして、間にリブ(支柱)で支える構造
最初に内側に小さめのドームを作って、外側にドームを建築することで、その隙間分だけレンガが不要になり軽量化できた。また、その隙間は展望台のテラスへ向かう通路に利用され観光客に開放されている。463段の階段をのぼると高さ90mの展望台。テラスからは赤いレンガ屋根のフィレンツェの街が一望でる。


ブルネレスキのプロフェッショナルな仕事は、それまで職人という存在でしかなかった人々が芸術家として尊敬され尊重されるきっかけになった。
建築家や画家、彫刻家など、ジャンルが明確にされたこともルネサンスの功績。

0 件のコメント: