北海道新聞
原発と有識者 寄付情報の徹底公開を(7月2日)
北海道電力泊原発3号機のプルサーマル計画の安全性を検証した道の有識者検討会議の委員3人が、原子力関連企業から寄付を受けていた。
3人合わせた総額は2011年までの6年間で692万円に上る。検討会議がまとめた報告書は、高橋はるみ知事が09年にプルサーマル計画受け入れを決めた根拠となった。
委員の1人は、現在も道の原子力防災計画の課題を整理する専門委の座長を務めている。
知事も、寄付を受けた有識者も、議論への影響はないとの認識を示している。行政や研究者の「常識」ではそうなのかもしれない。
しかし、福島第1原発の事故後、原子力の専門家への信頼が失われ、国民から注がれる視線は格段に厳しくなっている。知事や委員にはその自覚が足りないのではないか。
研究資金の必要性は分かる。企業の寄付自体が悪いわけではない。限られた予算を補うため、むしろ政府は産学連携を奨励してきた。
だが、寄付を受ければ、公正で中立な立場で判断すべき専門委員の役割と、資金を提供した企業の利害がぶつかる利益相反の疑いが生じる。
だからこそ、どこから、どんな趣旨でいくらもらったのか、隠さず公表し、常に外部の評価を意識する緊張感を持たなければならない。
この問題は原子力に限らない。5年前、インフルエンザ治療薬の副作用を調べていた研究者が、薬の輸入販売元から多額の寄付を受けていたことが発覚した。
これを機に、厚労省は利益相反をめぐるルール作りに乗り出し、製薬業界も医師や大学への寄付や研究費の流れを公表することになった。
原子力こそ、資金提供の実態を透明化する努力が最も強く求められている分野である。
福島の事故により、産官学にはびこる「原子力ムラ」が原発推進のために安全規制を形骸化させてきたことが白日の下にさらされたからだ。
原発メーカーなどからの専門家への寄付も相次いで判明した。原子力安全委員会の班目春樹委員長ら政府の委員のみならず、今回の北海道を含め原発立地自治体で安全審査にかかわった有識者にも及んでいる。
こうした反省を踏まえ、新たに設立される政府の原子力規制委員会の委員は、原子力事業者からの寄付情報の公開が義務づけられ、任期中の寄付も制限される。
道も同じルールを導入し、透明性を高めるべきだ。高橋知事は泊原発の再稼働に際し、安全性検証のための専門委の設置を検討している。現状のままで審議の中立性を強調しても、道民は納得しない。
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