2014年8月9日土曜日

明治37年(1904)10月1日~15日 福田英子『妾の半生涯』 小田頼造・山口義三の社会主義伝道行商 沙河会戦(日本軍死傷2万4,497人、内戦死4,099) ロシア・バルチック艦隊、リバウ軍港出港      

北の丸公園 モミジ林 2014-08-05
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明治37年(1904)
10月
・福田英子、自叙伝『妾の半生涯』。
8、9歳頃から明治34(1901)年女子工芸学校・日本女子恒産会設立まで。
大井憲太郎の結婚申し込みを承諾したことを「妾が終生の誤り」とする。
「先に政権の独占を憤ふれる民権自由の叫びに狂せし妾は、今は赤心資本の独占に抗して、不幸なる貧者の救済に傾けるなり。」
この年中に再版、翌年には5版を重ねる。
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・大町桂月「雑評論」(「太陽」)。晶子批判、乱臣国賊呼ばわり。
「戦争を非とするもの、夙(つと)に社会主義を唱ふものゝ連中ありしが、今又之を韻文に言ひあらはしたるものあり」と、非戦、社会主義者との関連で晶子をとらえ、前掲第三連に大きな傍点までつけて引用し、「さすがに放縦にして思ひ切つた事言ふ人も、筆大にしぶりたり。されど、草葬の一女子、(義勇公に奉ずべし)とのたまへる教育勅語、さては宣戦詔勅を非議す。大胆なるわざ也」と評す。
さらに桂月は、晶子詩第二連「堺の街のあきびとの/旧家をほこるあるじにて/親の名を継ぐ君なれば/君死にたまふことなかれ/旅順の城はほろぶとも/ほろびずとても何事か/君知るべきやあきびとの/家のおきてに無かりけり」を引用し、「家が大事也、妻が大事也、国は亡びてもよし、商人は戦ふべき義務なしと云ふは、余りに大胆すぐる言葉也。」(全傍点略)と解釈するのである。また「明星」が裸体画で発売禁止になったことがあるが、裸体画よりも世の中を害するのは、晶子のこのような思想だと決めつけている。
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・村井弦斎、小説『Hana』を英語で自費出版(弦斎が日本語で執筆し、川井運吉が翻訳。浮世絵の伝統を引く精緻な木版刷の挿絵を多用した豪華な造りの本)。
出版の動機は、日本人の美徳を紹介し、国際世論を日本に有利に導くことを意図するものだという。
英国の有力紙「タイムズ」や権威ある雑誌「アシニアム」にも論評が掲載された。
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・加藤高明、『東京日日新聞』買収。
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・荒畑寒村(17)、満州軍倉庫庫手に採用され宇品~大連に赴く。荒畑の生活を心配して海岸教会長老林氏が満州軍倉庫本部陸軍主計日疋信亮に頼み込む。感冒のため帰国。12月30日解雇。*
・ベトナムのファン・ボイ・チャウ(潘佩珠)ら、維新会結成。
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10月1日
・田添鉄二『経済進化論』発表。発禁となる。
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10月1日
・総参謀長山県元帥、奏上。児玉大将の辞表却下。北進延期裁可。
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10月1日
・政府の戦争予算に対し、教育費削減反対同盟成立。
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10月1日
・ロシア、ピアニスト、ホロヴィッツ、誕生。キエフ。
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10月2日
・週刊『平民新聞』第47号発行
小田頼造・山口義三「伝道行商のために京を発するに臨みて」
「予等は……社会主義の書類を載せたる車をひきつつ旧東海道にそひて西行し、沿道大小の村落都会に於て伝道行商せんと欲す。予等は予め兼行の日数を限定せず、成るべく綿密に此主義の福音を各地に宣伝すべく、沿道の地方を去る数里の僻地と雖ももし諸君の予等を助けらるるあらば、予等は成るべく諸君を訪問して其地に伝道行商せん。此間実に多くの困難と艱苦に遭遇すべし、されど予等はこれに堪ふるの勇気を養ふと共に、諸君が予等の微力を憫(あわれ)み予等を助けて今回の行を成就せしめらるることを信ぜんと欲す。予等は貧弱なる寒生なり、従って自活の費を主義書類販売より得たる利益に求めざる可らず、諸君よ、予等が此の事実を諒とされて談話、講演、演説に将文(はたまた)書類販売に大小斡旋の労を採られよ、是れ予等の切望して止まざる所也。」
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10月2日
・ドイツ領南西アフリカ(現ナミビア)、ヘレロ人、オバンボ人、ナマ人の対ドイツ抵抗。
ヘレロ族の首長が独に宣戦布告(独人入植者に土地を奪われたため1月に蜂起)。
ドイツ軍最高司令官トロータ将軍、無差別殺戮指示。
反乱は1907年にようやく鎮圧。
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10月2日
・(露暦9/19)ロシア、ガボン組合第1回総会。海員1200人。
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10月2日
・オーストリア・ロシア、相互中立声明。
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10月3日
・東京日比谷で国民後援大会。
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10月3日
・フランス・スペイン協定締結。
モロッコ統一と独立を公式承認。分割統治の秘密条項。
地中海沿岸部はスペインの影響下に。
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10月3日
・トーマス・マン、カタリーナ・プリングスハイム(愛称カーチャ)婚約。翌年1月結婚。
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10月4日
・ロシア満州軍東部兵団前進。
翌日、西部兵団も前進。
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10月4日
・遭難した米船ベンジャミン・シオール号の船員、台湾で殺害。
12月17日、米公使抗議。
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10月5日
・旅順口砲撃に28センチ砲12門追加
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10月5日
・小田野声(頼造)・山口孤剣(義三)、東京~下関、徒歩で社会主義伝道行商。
翌明治38年1月25日、下関着。
社会主義協会員65人獲得、演説会・講話会18回、書類販売1097冊。
小田は、その後、九州一円の伝道行商敢行(明治39年、伊藤證信の無我愛に共鳴、社会主義を捨てる)。
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10月6日
・南方熊楠、足かけ3年の熊野植物調査を完了、勝浦を出発、途中採集をしながら田辺へ歩く。田辺定住生活始まる。
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10月6日
・ロシア、レーヴェリ軍港、皇帝・皇太子・皇太后、バルチック艦隊、巡視・激励。
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10月8日
・韓国咸鏡道で軍政施行。反日活動家が逃避し「露国党の巣窟」といわれる。
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10月9日
・総参謀長山県元帥より派遣された大本営兵站総監部参謀長大島大佐が満州軍総参謀長児玉大将に北進延期裁可を伝えるが、南進するロシア軍を迎撃するのは追撃ではないとする。
午後8時、総司令官大山元帥は進撃下命。
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10月9日
・週刊『平民新聞』第48号発行
堺利彦「共産党宣言に就いて」
日本ではまだ訳されていない共産党宣言全文を、『平民新聞』一周年の記念として翻訳し、紙面に掲げようという。
堺によれば、「共産党宣言」と『資本論』は『平民新聞』で何度も紹介していたものの、実際にはまだ誰も読んでいなかった。一周年記念に何をするかという話が出たとき、小島龍太郎が「共産党宣言」の訳出を勧めた。そこで堺たちは一周年に当たるこの年11月13日発行の第53号を記念号とし、発行の当日には同志の小園遊会を催すことを『平民新聞』で予告した。
また、一周年記念として、社会党六偉人、マルクス、エンゲルス、ラサール、べーベル、クロボトキン、トルストイの肖像入り六枚一組の絵はがきの発行も計画され、希望者に頒布された。
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10月9日
・二葉亭四迷、北豊島郡滝野川村田端に転居。
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10月10日
・沙河会戦
日本満州軍主力、遼陽から北上開始。沙河付近で接戦。
ロシア軍は後退するも日本軍は兵力・弾薬不足のため追撃せず。
日本軍死傷2万4497人。
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10月11日
・第12師団第12旅団第14連隊と後備近衛旅団(梅沢道治少将)はシベリア第1・3軍と対戦。
死傷第14連隊780・梅沢支隊391。ロシア側被害も甚大。

シベリア第3軍第6師団の場合、師団長以下将校のほぼ全員死傷。
シベリア第3軍団とザバイカル騎兵師団だけで死傷4~5千。
シベリア第4軍団第2師団第2旅団第8連隊は日本軍第2師団の攻撃により2/3を喪失、軍団長ザルバエフ中将は退却命令。その右翼の第10軍団第31師団もあおりを受けて後退。同軍団第9師団第2旅団は、日本軍第5師団の砲撃により、第1線の第124連隊は 将校7・下士兵250死傷。
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10月11日
・榎本健一、誕生。
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10月11日
・バルチック艦隊、レーヴェリ軍港発。
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10月12日
・午前1時40分、第4軍第10師団(川村景明中将)第8旅団(代理第40連隊長鎌田宣正大佐)第40・10連隊、三塊石山を夜襲(旅団長代理鎌田大佐は捻挫のため久野中佐が代理、その久野中佐は銃弾をうけ負傷)。
午前2時、第40連隊(代理第1大隊長山縣万吉少佐)は三塊石山の敵前300mに達するが、ここで頓挫。
午前4時、第10連隊が三塊石山南麓に到着。同時に支援の第20旅団(丸井少将)第39・20連隊が三塊石部落東側に到着。同士討ちを避けるためラッパを鳴らし、ロシア軍の射撃を浴びる。
午前4時20分、第40連隊第2大隊(船橋芳蔵少佐)第5・6中隊が三塊石山南側鞍部を確保。
午前4時30分、支援の後備第10旅団(門司和太郎大佐)後備歩兵第20連隊(竹下平作中佐)が東麓に到着。
午前5時、加勢を得た第10・40連隊が奮進して西南部岩山を占領。
午前6時、第20旅団第39・20連隊が三塊石村に乱入。ロシア軍の抵抗で第20旅団長丸井少将負傷、第39連隊長安村大佐戦死。
午前7時、第20・39連隊の一部が北川岩山の頂上に立ち、東北斜面のロシア軍を追払う。
午前8時、三塊石部落に放火すると、ロシア兵は退却。部落の大半を占領。
正午、占領。
三塊石山夜襲の損害戦死312、負傷1,178。夜半迄には全軍が北に退却。
沙河会戦の損害:ロシア41,346(うち戦死5,084)、日本24,497(4099)
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10月12日
・夜半、ロシア全満州軍退却。
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10月12日
・第3回国庫債券8,000万円発行規定公布。利率5分。
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10月12日
・バルチック艦隊、ロシア最後の泊地リバウ軍港入港。
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10月15日
・北海道鉄道、熱郛-小沢間開通。これで函館−小樽間全通。
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10月15日
・バルチック艦隊(ロシア海軍軍令部長心得兼侍従将官ロジェストヴェンスキー少将)、4集団に分かれバルト海リバウ軍港発。
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