高知新聞
【安倍政治を問う・共謀罪】心の内を取り締まるのか
2014年08月10日07時43分
特定秘密保護法、集団的自衛権の行使容認に続いて、安倍政権が目指しているとされるものに「共謀罪」の新設がある。
殺人などの重大犯罪で具体的な犯罪行為がなくても、謀議に加わっただけで処罰の対象となる。秘密保護法と同様に、当局の恣意(しい)的な運用などが懸念される。
共謀罪は過去に3度、組織犯罪処罰法改正の形で自公政権が国会に提出したが、廃案や継続審議になってきた。そんな問題のある法案を、政府が今秋の臨時国会に提出するという見方が浮上している。
なぜ臨時国会かというと、政府が集団的自衛権の行使容認を踏まえた安全保障関連の法案を、来年の通常国会に先送りする見通しとなったからだ。自らつくった国会審議の「隙間」を狙って懸案処理をしようというのなら、ずいぶん身勝手な話ではないか。
共謀罪はテロや薬物・銃器取引、密入国などで、2人以上が話し合い、犯罪の実行で「合意」があれば処罰の対象となる。いわば「心の内」の犯意だけで罪に問われる。
だが日本の刑法は、どのような行為を犯罪とし、どんな刑罰を科すかを法律で定める「罪刑法定主義」が原則だ。「話し合い」や「合意」の在り方はあいまいで、捜査当局が強引な解釈をすれば摘発の対象は普通の市民活動に広がりかねない。
共謀罪について政府は、国連の国際犯罪防止条約を締結するために必要と説明する。一方、日本弁護士連合会は条約の批准に「新たな立法は必要ない」という立場だ。
犯罪の謀議を当局が把握するには、市民の日常会話や電話、メールなどの傍受が必要になろう。6月末の法制審議会の部会は、取り調べの一部可視化と引き換えに、通信傍受の対象を拡大し、通信事業者の立ち会いを不要とした。着々と手を打っている。
また既に、秘密保護法には機密の漏えいの罰則対象に、共謀罪が先行して導入されている。特定秘密を得ようと複数の人が話し合っただけで共謀と認定される恐れがある。
共謀罪の新設、通信傍受法改正、秘密保護法はワンセットだ。国による監視強化で言論・情報統制が進むのを、黙って見過ごすことはできない。
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