片岡球子(1905-2008)の
「面構(つらがまえ)」シリーズの2点と「富士」シリーズの1点
▲『面構 浮世絵師喜多川歌麿と版元蔦屋重三郎』(1992)
「面構」シリーズは、片岡球子の画業の中心に位置するライフワーク。歴史上の実在人物をみずからの傍らに引き寄せ、主観的リアリズムをもって描いている。
本作は、その構想力を伝える力作の一つ。
浮世絵の版元蔦屋重三郎と、蔦屋に見出され、美人大首絵を創案した浮世絵師喜多川歌麿とを、87歳とは思えぬ力強い筆致とダイナミックな彩色で強烈に印象づけながら、版元あっての絵師でもあった二人の関係性を描き出している。
▲『面構 浮世絵師鳥居清長と版元榮壽堂主人西村屋与八』(1993)
▲『富士』(1980)
片岡球子は、1960年代に、山を主題とするようになる。まず、桜島、浅間山など、内なるエネルギーを発散させる火山の力強い存在感を、特有の色遺いと厚塗りの工夫で描いたのち、富士に取り組み、多様な富士の魅力を描きつづけた。
本作では、実際に写生した山容とそれを囲む景観を、一旦みずからのうちに深く沈めて咀嚼し、画家独自の新たな富士像として、草食性豊かに描いている。
「面構」に見られる構想力がここでも存分に発揮されている。
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