東京新聞
NHK会長 慰安婦発言 官房長官「問題ない」
2014年1月27日 夕刊
菅義偉(すがよしひで)官房長官は二十七日午前の記者会見で、NHKの籾井勝人(もみいかつと)会長が就任会見に際し、従軍慰安婦問題について「戦争地域ではどこでもあった」と発言したことに関し「籾井会長が個人として発言した。社会的使命を担う公共放送のトップとして、放送法に基づいて職務を果たしていただきたい」と、辞任は必要ないとの考えを示した。
安倍政権として、籾井氏を擁護する姿勢を明確にした発言。日本政府に対し海外から批判が出るのは必至で、国内でも二十八日から衆参両院で始まる与野党代表質問で野党側は政権を追及する構えだ。
菅氏は会見で「籾井氏は会長としての発言と個人としての発言の整理がついていなかったのだろう」と指摘。「会長としての発言なら取り消すと言われたので問題ない」と強調した。さらに「最初(の記者会見)だから戸惑ったのだろう。個人的なことを言っても、『会長として(発言した)』と捉えられるということを理解して(今後は)職責を果たしてくれると思う」と述べた。
安倍晋三首相の慰安婦問題への対応については「首相は筆舌に尽くしがたいつらい思いをした方々のことに心を痛めている。この点は歴代首相と変わりない」と述べた。
◆菅官房長官の一問一答
菅氏の記者会見の一問一答は次の通り。
-政治的中立性の観点から疑問視する声がある。
「籾井会長が個人として発言されたものと承知している。社会的使命を担う公共放送のトップとして放送法に基づいて職務を果たしていただきたい」
-外交上の懸念は。
「会長はどうしてもと言われて個人として発言したが、会長としての会見だと指摘されて、会長ならそこはすべて取り消すと言っているので、問題ない」
-軽率だったのでは。
「会長としての発言と個人としての発言の整理がついていなかったのだろう」
-籾井氏は国際放送の強化などで政権の意向に沿うという趣旨の発言も。
「NHKの国際番組基準でわが国の国際問題に対する公的見解、世論動向を正しく伝えることが規定されている。この基準順守が重要だ」
-会長人事は政権の意向が反映されたのでは。
「まったくない。法的手続きに基づき、粛々と選ばれた方だ」
◆「個人的」ありえぬ
ジャーナリズム論が専門の桂敬一東大元教授の話 NHK会長として失格だ。就任の記者会見は、公人として会長としての所感を披歴する場。記者は趣味の質問をしているのではなく、会長がどのような物の考え方かを聞いているのであって、個人としての発言はありえない。それをわきまえないで、中立・公正を求める放送法に縛られるNHK会長としての役割が果たせるわけがない。また、慰安婦問題などが百歩譲って個人の意見としても、「政府が右というものを左というわけにはいかない」との発言は到底、個人の発言とは思えず、NHKの在り方を語った言葉だ。菅官房長官の擁護発言はおかしい。
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