『ナポリの浜の思い出』(1870-72)
国立西洋美術館常設展
2016-04-15
19世紀の画家たちにとって、イタリアは憧れの土地でした。
コローも3度にわたってイタリアを訪れ、数々の戸外スケッチを手がけています。
ナポリ滞在は短いものでしたが、画家に強い印象を残したようで、1840-42にマントの友人ロベールの屋敷の浴室装飾のために《ナポリの田舎の思い出》(パリ、ルーヴル美術館)を制作しているほか、後年、この地を追想した風景画をいく度か描きました。
銀灰色のニュアンスが散らされた本作品はそのなかでも年代的に最後に位置し、コロー晩年の画風をよくあらわしています。
画面両脇に配した木々が作り出す装飾的な枠は一種の舞台装置とも言え、前景に演劇的効果をあげています。
やわらかく葉をそよがせる木々のアーチの下には幼児を抱く女とタンバリンを手に踊る女の姿があり、その向こう側には光に満ちたナポリの浜辺と空の青が開けています。
特徴的な縦長の構図で、この画家としてはかなり大画面の本作品の前に立つと、木立の奥から爽やかな海風が吹き寄せてくるようです。
▲展示されているフロアー
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