首相「誤解」発言1日で修正 「10年で150万円増」GNIを平均年収と演説
2013年6月11日 朝刊
安倍晋三首相は八日の都内での街頭演説で、国の豊かさを測る指標の一つとして用いる国民総所得(GNI)を、国民の年収と混同して発言し、翌九日に修正した。菅義偉官房長官は十日の記者会見で「分かりやすく説明しようとした」と釈明したが、国民が誤解しかねない表現だった。
首相は五日に発表した成長戦略第三弾で、一人当たりのGNIを「十年後には現在の水準から百五十万円以上増やす」と宣言した。GNIは国民や日本企業が一年間に国内外で得た所得を指す。企業の所得が含まれるため、個人の所得を示す指標とは別物だ。
それなのに首相は八日、都議選の自民党候補を応援する街頭演説で、一人当たりのGNIについてきちんと説明しないまま「十年間で百五十万円、収入が増える」と発言。別の場所でも「十年間で平均年収を百五十万円増やすと約束する」「成長戦略を進めていけば、間違いなく年収が百五十万円増える」と繰り返した。
首相は、九日に一部報道などで表現の変化について指摘を受けると、同日の街頭演説では成長戦略の発表時と同じ表現に修正した。
街頭演説に先だって出演した九日のNHK番組では、GNIについて「ちょっと分かりにくいが、これが増えていかなければ国民の収入が増えていかないのは当然だ」と八日の表現に若干の補足を加えた。
アベノ「インチキ」ミクス!そもそもGNIは海外での企業活動の収益を含む指標であって、国内の庶民の収入とは無関係のものだ。★首相「誤解」発言1日で修正 「10年で150万円増」GNIを平均年収と演説 (東京新聞) tokyo-np.co.jp/article/politi…
— Katsuaki Sakaiさん (@beyondaki) 2013年6月11日首相は都内街頭演説で「10年間で国民の年収を150万円増やす」。「成長戦略」で「150万増やす」としているのは「1人当たりの国民総所得(GNI)」でしょ。 GNIには海外での企業の儲けも含まれ、国民の年収とは違う。分かって言っていたらウソつき、分からないで言っていたら無知になる。
— 志位和夫さん (@shiikazuo) 2013年6月10日安倍政権が「国内総生産」(GDP)に代わって、「国民総所得」(GNI)を強調しはじめたのは、意味深長だ。GNIには多国籍企業としての海外で稼ぎも入ってくる。工場を閉鎖し、労働者を首にし、海外に生産拠点を移して稼いでもGNIは増える。「多国籍企業栄えて、国滅ぶ」への道はお断りだ。
— 志位和夫さん (@shiikazuo) 2013年6月8日首相「1人当たり国民総所得(GNI)を10年間で150万円増やす」。GNIとは企業の海外投資による利益も含む。GNIが増えたからといって賃金が同じように増えるわけではない。小泉内閣5年間で1人当たりGNIは18万円増えたが、1人当たり賃金は16万円減った。言葉のトリックにご用心!
— 志位和夫さん (@shiikazuo) 2013年6月6日ガジェット通信
国民所得150万円増でも給料増えず 浜矩子氏「アホ」と一蹴
「10年間でみなさんの年収は150万円増えます」──安倍首相は街頭演説やテレビ出演で国民にそうバラ色の夢を振りまいている。
そんな言葉を真に受けたら馬鹿を見る。安倍首相の年収アップ論にはそもそも大きな誤魔化しがあるからだ。
52年前、時の池田勇人・首相は、「10年間で給料を2倍にする。できなければ政治家はやめる」と国民に約束し、高度成長期の波に乗ってそれは実現した。
だが、安倍政権が成長戦略で目標に掲げたのは、「年収」ではなく、「1人あたりの国民総所得」(GNI)を10年後に150万円増やすというもの。これは現実には、国民の収入増加を意味しない。
「アホノミクス」の命名者である、同志社大学大学院ビジネス研究科・浜矩子(のりこ)教授はその見え透いた騙し方が「アホ」だという。
「国民総所得は『国民の給与所得』とは全く別の指標で、企業の利益や政府の公共投資が含まれる。たとえば企業が社員のクビを切って海外に工場を移転し、そこで利益をあげれば国民総所得は増えるし、政府が増税で公共事業をバラ撒いても増える。安倍内閣がこの指標を持ち出して『給料が上がる』と説明していますが、それは間違いなのです」
もちろん、安倍首相が国民総所得と年収の違いを知らなかったわけではない。
「安倍総理は成長戦略を打ち出すにあたって池田勇人首相の所得倍増計画に匹敵する目標はないかと秘書官に指示し、150万円の数字が出てきた。前提となる実質2%、名目3%という成長目標を決めたのは財務省だ。安倍首相はレクチャーで国民総所得と年収の違いは説明を受けており、それでもいいと目標にした」(官邸関係者)
演説の変化を辿ると“確信犯”で間違えたことがわかる。安倍首相が最初に成長目標を掲げたのは6月5日の成長戦略発表スピーチでのこと。
「国内外の潜在市場を掘り起こし、一人あたりの売上を伸ばす。その果実を、賃金・所得として家計に還元します」と、国民総所得が賃金に反映されるためのメカニズムを正確に説明し、「1人あたりの国民総所得」を150万円増やすと語った。
表現を変えたのは8日の都議選の街頭演説からだ。1か所目の墨田区曳舟の駅前では、恐る恐る聴衆の反応を確かめるように「国民の平均の所得」と言い換え、2か所目の両国になると「収入が増える」、そして3か所目の江東区豊洲に来ると自信満々に「平均年収を150万円増やすことをお約束します」と開き直った。
そして翌日、NHKの日曜討論で間違いを指摘されるとこんな言い方をしたのである。
「国の貿易や特許料も含めた総収入の1人あたりですが、これが増えていかなければ国民の所得も増えないのは当然」
GNIが増えなければ所得は増えない。だが、GNIが増えれば国民の所得が必ず増えるわけではない。
実際、日本では小泉内閣の2003年から第1次安倍内閣の2007年までの5年間、「1人あたり国民所得」は約398万円から約414万円へと16万円アップしたが、サラリーマンの平均年収は443万円から437万円へと7万円減っているのである(国税庁「民間給与実態統計調査」)。
「国民総所得」が増えても企業が利益を社員に還元しなければ給料は上がらない。高度成長期の池田首相はあえて「給料を2倍に」と約束した。安倍首相が本気で企業に賃上げを求める気であれば、収入アップを成長目標にすることができたはずだ。お年寄りから子供まで「1人150万円増」なら4人世帯の年収は600万円増える。
平成の所得倍増をいわずに「経済指標」に逃げたことが国民への最大の誤魔化しなのだ。
※週刊ポスト2013年6月28日号
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