東京新聞
JA全中脱原発宣言 全国大会決議へ「蜜月」自民と一線
2012年10月5日 朝刊
全国農業協同組合中央会(JA全中)が、十、十一の両日に開く全国大会で、「将来的な脱原発」を活動方針に決める。東京電力福島第一原発事故で、各地の農家が出荷制限や風評被害に苦しめられたことで、脱原発への機運が広がった。支援してきた自民党は原発維持路線だが、一線を画すことになる。
大会は福島事故後初めて。活動方針には、将来的に脱原発を実現していくことを掲げ、農業の現場でも太陽光や小水力、バイオマスなどの再生可能エネルギーを推進していく方針も記している。
福島の事故では、東北や関東地方を中心に広範囲で出荷制限や風評被害による損害が発生した。JA全中によると、九月末までに十九都道県のJAグループが東電に計約二千八百二十七億円の損害賠償を請求している。風評被害の証明が難しいケースも多く、実際の損害はこれを大きく上回るとみられている。
人の口に入る農作物を扱う農業団体としては、原発との共存は難しいと判断した。
大会資料では、農業用水で発電したり、農地に太陽光パネルを設置した実例も紹介している。
JAグループの生産活動を担う全国農業協同組合連合会(JA全農)は三菱商事と共同で、全国の農家やJAの施設の屋根に太陽光パネルを設置する事業に乗り出した。二〇一四年度末までに全国四百~六百カ所にパネルを設置し、計二十万キロワットの発電能力を目指している。
太陽光などで発電した電気は、七月に本格実施された固定価格買い取り制度で電力会社が買い取る。JA全中は、小規模発電でも事業として成り立つような価格設定を政府に働き掛けていくことも検討している。
JA全中広報部は「JAの使命は、安全な農産物を将来にわたって供給すること。原発事故のリスクを抱えたままではその使命を果たせない」と、脱原発を新たな活動方針とする理由を説明した。
これまでJAグループは、組織内から国会議員を送り出すなど自民党とは密接な関係を保ってきた。
ただ、同党は安倍晋三総裁の下で原発維持の考えを鮮明にしている。元JA全中専務理事の山田俊男参院議員(自民)は「原発事故で被害を受けた農業者の思いには非常に共感できる。党内でも議論していきたい」とコメントした。
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